ティアラ
誘われたらホイホイついてくる、と思われたくはない。

「たまには、ああいうところへ行くのもいいもんだな。無理やりだったけど、結構、楽しかったよ」

ベンチの背もたれに身を置いて、今日一日のあたしたちを振り返る彼。

電車が来る時間が近づいているからか、ホームには人がたくさん集まってきている。

あたしは近くにいるカップルを眺めながら、返す言葉を考えていた。

……こんなこと言ったら、また調子に乗るかもしれない。

でも、これくらいなら言ってもいい気がする。


チラチラ深町の横顔を見るあたしは、意を決して口を開いた。
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