ティアラ
「ごめん、先に帰って」

振り返った深町は素っ気なくそう言うと、ホームの端にある階段へ向かっていく。

15分ごとに到着する電車が、やっと来たところなのに……。

あたしは電車に乗り込む人だかりの中、困惑した表情で立ち尽くす。

せっかく、次のデートを誘いやすくしてあげたのに……。

ていうか、ご飯の約束は?

「意味わかんない」

そんな簡単に「帰って」って言われて、帰れるわけないじゃん。

変な態度で去っていかれて、気にならないわけないでしょ。

何があったのか心配になったあたしは、彼の後を追うように階段をのぼった。
< 309 / 555 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop