あなたに恋をしたらダメですか?
「こちらがカプチーノで、こちらがハニーラテです」
「あ、ここラテアートしてくれるんだ?」
「はい、そうなんです」
「俺のは…羽?」
「はい。天使の羽なんですよ、可愛いですよね」
「うん、とっても可愛い」


自分に言われたわけじゃないのに、陽悟さんの〝可愛い〟はキュンと私のハートを撃ち抜く。


「緋紗子のは、なに?あ、こいのぼり?」
「そうなんです。もうすぐ、こどもの日なので、こいのぼりを。私も昨日、こいのぼりにしてもらったんですよ」
「へぇ〜」


陽悟さんがテーブルに肘をのせ、前のめりになって緋紗子さんの、こいのぼりを見ていたのに当の本人は、あまり嬉しくなかったのか「陽悟って子供みたい、バカじゃない?」と、未知子さんがせっかく描いたラテアートに砂糖を入れると、グルグルと掻き回した。


「あ、なにやってんの緋紗子」
「はぁ?砂糖入れたいのに、混ぜなきゃどうやって飲むのよ」
「甘いのヤダつったのお前じゃないかよ」
「………」


陽悟さんの言葉に緋紗子さんは黙ってしまった。実際カプチーノ好きの方でも、お砂糖を入れるお客様は多い。


それにお金を払って飲みに来ているのだから、混ぜることに関しては私たちが、とやかく言うことではない。


ただ一つ言うならば、少しでも見てほしかったかな…。でも、それも人それぞれだもんね…。


「あっ、カプチーノってお砂糖入れたいですよね!分かります!」
「べつに?砂糖入れなくたって、飲めるし」
「そう、なんですねぇ〜。あの、では、わたし失礼しますねぇ…」


ダメだ、ここはもう逃げるしかない。うん、そうしよう!それが一番だ!


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