あなたに恋をしたらダメですか?
どうしよう…。走って行っちゃったんだけど…。断る時間もなかった…。


呆然としたまま、斎藤さんが出て行ったドアを見つめる。そして、その視界に陽悟さんが目に入った。


「っ、」


こちらなんか見てないと思っていたのに、陽悟さんは私を見ていて一瞬目が合うも私のほうから、目を逸らしてしまった。


「み、未知子さん…どうしましょう…」


困った私は未知子さんのほうを見ると、未知子さんも困ったような顔をする。


「斎藤さん、動き出したねぇ」
「動き出したって……」
「でもほら、イヤなら行かなきゃいいんじゃない?」
「でも、そんなことしたら、お客様一人減っちゃうかも…」
「あのね、そんなこと気にしないの!一人くらいどうってことないって!」


あはは!と未知子さんは笑い飛ばしたけど、斎藤さんは常連さんなわけだし…。


ここで私が行かなかったら、斎藤さんはもう来てくれないかもしれない。


でも、だからって好きじゃない人と映画……デートって恋愛ベタの私にとっては、かなり難易度が高いというか…。


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