あなたに恋をしたらダメですか?
そんな考えをしている時だった。


「咲世ちゃん」
「あ、はいっ」
「お水、もらってもいい?」
「た、ただいま!」


陽悟さんから声を掛けられ、お水の入ったピッチャーを慌てて陽悟さんたちがいる席へと急いだ。


「すみません、気付かなくて」
「ううん、いいんだよ。それより、デートのお誘い?」
「っ、」


陽悟さんに見つめられて、さっきのことに触れられた。べつに私が斎藤さんと映画に行こうが、きっと陽悟さんには関係のない話。


だけど、私は斎藤さんじゃなくて陽悟さんが好きなんです!とも言えない。


「あーら、いいんじゃないのー?あなたには似合ってるんじゃない?爽やかイケメンさんとのデート。しちゃえばいいのに」


クスクスと笑う緋紗子さんに、私は何も言えない。緋紗子さんには関係ない、でも言い返すのは違う気がして黙った。


「緋紗子は黙って」
「は?なんで!私は、」
「聞こえなかったの?黙って?」
「………」


陽悟さんの言葉に、緋紗子さんは面白くない顔をして、そのままカプチーノに口を付けた。


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