あなたに恋をしたらダメですか?
「咲世ちゃんは分かってないよ」
「陽悟さんこそ分かってないですよ」


同じことをそのまま返すと、陽悟さんは小さくため息をついた。


そして右手を私の座ってるシートの奥に手を付くと、身体も顔もグンッと近くなった。


「咲世ちゃん、俺だって怒るよ?」
「……もう、怒ってるじゃないですかっ。というか、顔も身体も近いです!」
「咲世ちゃんが悪い子だからでしょ?それとも、もっと近付いてほしい?」


それだって冗談なんだ。そうやって言って、私を納得させる気なんでしょ。


でも残念でした。生憎、私には魅力の〝み〟の字もないんだから!…って、思ってたのに。


「できるなら、すればいいじゃないですか。どうせ私にはキスも出来ないくせに」
「………」
「っ、」


それは、ほんの一瞬のことで。すぐには言葉が出てこなかった。


「……はじめての、キス、だったのにっ、」
「ごめ、咲世ちゃん!」


陽悟さんと目が合って、現実を知った途端、奥から涙が溢れて、大人が泣くような泣き方も出来ず、陽悟さんに謝られても頭を撫でられても、涙だけは止まらず子供のように泣いた。


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