あなたに恋をしたらダメですか?
そんな時だ、玄関のドアの閉まる音が聞こえたのは。もうそんな時間か…。


蒼井さんに怒られるんだろうなぁ、勝手に入って紫月ちゃんと喋ってたから…。


なんて思っていると、案の定、蒼井さんは眉間を歪ませながらリビングへと入ってきた。


「陽悟お前な、」
「聞いて!吏仁!陽悟さんってば最低なんだから!!」
「は?」


と思ったら、だ。蒼井さんよりも紫月ちゃんのほうが、さっきのことでご立腹になったらしく、蒼井さんに飛びかかっていた。


当然、蒼井さんは何のことだか分からない様子で、俺はそれを他人事のように、ただ見ていた。


「あのね、それでね、キスしちゃったんだって!バカだと思わない?!」


う……何度もバカと言われると、俺だってさすがに傷付くよ紫月ちゃん…。


当然、蒼井さんもため息をつき「お前、アホだな」と言われた。バカにアホに、俺は一体何なんだろうな。


「でしょ?だから吏仁。電話して!」
「は?誰にだよ」
「誰にって、咲世ちゃんに決まってるでしょ!」
「何で俺がすんだよ。つーか番号知らねぇし」
「陽悟さんから聞いて!ほら、陽悟さん番号!」
「いや、紫月ちゃん、」
「早くしなさい!」
「…はい」


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