あなたに恋をしたらダメですか?
あー、焦った…。送るなんて変なこと言わないでほしいよ…。


変な汗を感じながら、マンションを出ると陽悟さんが車から降りて待っていた。


「っ、」


その姿を見た瞬間、ドキドキとは違う変な緊張があった。そして、黙って見ている私に気付いたのか、一瞬目を大きくさせると陽悟さんもずっと私を見て、少しの間見つめ合う形になった。


それに耐えきれなくなったのは私のほうで、目を逸らすと陽悟さんのところへ、ゆっくりと歩いた。


「ごめんね、急に」
「いえ…」
「俺の話、聞いてくれる…?」
「…はい」
「じゃあ、移動しようか。今度はすぐそこだから」
「はい…」


助手席を開けてくれて、私が乗り込むとドアを閉めてくれて、私がシートベルトをしたところで車は発進した。


「ビックリしたよね…?」
「えっとー、そうですね…」
「紫月ちゃん、昔は可愛かったんだけど、蒼井さんと結婚してから怖くなってきて…って、今回は俺が悪いから当たり前なんだけど…」


陽悟さんは自分で言うと、乾いた声で小さく笑った。


きっと、紫月さんに私とのことを言って、何か言われたんだろう。でも私が煽っただけなのに…。


< 88 / 122 >

この作品をシェア

pagetop