あなたに恋をしたらダメですか?
緋紗子は、ただただ床に座り込んで泣いていた。


何度か帰ろうとしたものの、このまま一人にしていいのか…と、考えてしまうと帰るに帰れなかった。


やがて、少しずつ落ち着きを取り戻してきた緋紗子は、ゆっくりと立ち上がった。


「緋紗子、」
「名前も呼ばないで!!触らないで!!陽悟なんか大嫌い!!」
「……ごめんな、もう俺みたいな男じゃなく、ちゃんと愛してくれる男と出会えよ?」


ただただ俯く緋紗子をその場に残し、俺は金だけを置いてホテルを出た。


「よ!お盛んですな?」
「お前…」


俺がホテルを出ると、なぜか竜哉が立っていた。


「何でここにいんだよ」
「んー、陽悟のストーカー?」
「真面目に答えなよ」
「はいはい、たまたまだよ。たまたま、陽悟を見かけたの。あんな綺麗な子とヤんのかー、って見てたら何か陽悟の様子変だったし?と思ったら、やっぱり早々と出てくるし。縁切った感じ?」


竜哉とは腐れ縁で、俺のことは何でも見抜かれる。俺は普通にしていたつもりでも、竜哉にはバレバレって…。


「あー、そうだよ。縁切ってきた。あいつは俺みたいな男と遊ぶようなことは似合わないんだよ」
「それは、あの子の為?」
「……とりあえず移動しね?」
「だなー」


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