君の平熱は少し高い。
*君の中で私はクラスメイトじゃなくなった
「武内?」
「え、あっ」
不意に呼ばれた名前。
タイミング悪くすべりおちる手の中のDVD。
私の名前を呼んだクラスメイトはそれを拾い上げる。
そして拾ったそれを見て、言葉を失ったように黙り込んだ。
「っ。ごめん。拾ってくれてありがとう」
平常心を保ちながら、普通をよそおってお礼を言う。
しかし彼のほうは平常心ではなかった。
拾ったDVDと私の顔を見比べるように、チラチラとみている。
「これ、武内が見るの?」
「そうだけど」
私と彼がなんとなく気まずくなっているのは、私が落としたDVDに理由がある。
私が落としたDVDには、R-18という表示がされていた。
彼は物珍しそうに、そのDVDのパッケージの裏などもみる。
裏にはきっと血だらけの裸の女の人とかうつっていたはずだ。
「なに? AVなの?」
「違う。気になる監督さんの作品なの」
「へぇ。武内こんなの見るんだね」
「いいでしょ、もう。返してよ」
私は彼の手からひったくるようにそれをとると、ディスクをぬいて外見を元の棚に戻す。
彼はいまだに納得しきれていないような顔をしていた。