君の平熱は少し高い。
「それ、どんな話なの?」
「・・・なんかの殺人事件をインスパイアした作品とかで、ネットで人気になってたの」
「へぇ」
あぁ、嫌なところをクラスメイトにみられてしまった。
別にただの恋愛映画だとか、ミステリーなら全然かまわないのだけど、R-18と表示がつくだけでゲテモノ扱いだ。
変態だとか思われてるのかな。
仲のいい友人ならまだ弁解をする気分にもなるのだが、たまにしか話さないクラスメイトの男子だとそんな気分にもならない。
彼は黒崎光という名前で、別に家が近くもないし、仲もよくない。
テスト範囲をきかれたりするだけのそんな関係。
そんな相手に弁解してもしょうがない。
でも、男子の間で、武内はAVを借りる変態だ、みたいな話をされては勘弁だ。
でも必死にこれは変態てきなものではないだとか話すと、それはそれで怪しまれる気がしてならない。
「じゃ、ばいばい」
深く追求される前に私はそのDVDを抱えて、彼の横を通り抜けた。
彼は特に私をとめるようなこともせず、自分もDVDを探し始める。
その姿を見届けると、私はすっとレジへと向かった。
次の日、学校で嫌なことになっていないといいけど・・・。
そんなことを不安がっていたけれど、次の日意を決して教室に行ってみると特になにもなかった。
相変わらずの教室だった。
彼と私の間も何もなかった。
・・・と、思ったのはこの時だけだ。