窓ぎわ橙の見える席で


そのフレンチレストランとやらは、駅前の賑わいを見せる大通りからはやや外れにあり、2階建ての北欧っぽいデザインの建物にあった。
店内は外観よりも広く感じ、席数は思ったよりも多い。
壁にはメインシェフの顔写真とコメントが貼り付けられていて、若そうな女性が笑顔で写っていた。


「ここね、31歳の女の人がシェフなんだってよ。すごいよねぇ」


写真を眺めていたら辺見くんが教えてくれた。
確かに言われてみれば店内のインテリアがどれも女性が好みそうな可愛らしいものばかりだ。
落ち着いた色合いというよりは、白や生成りを基調としたインテリアで統一されている。


なかなかのイケメンなウェイターが私たちのテーブルにやって来て、「ご予約ありがとうございます」と微笑んだ。
メニューを差し出されたので受け取り、どれどれと見てみて驚いた。


「へ、辺見くん!ちょっと!」

「どうしたの?」

「ね、ね、値段!コース料理の値段!海鮮焼きそばの……10倍!」

「今日はお弁当のお礼だから。奮発するよ」


いやいや、気軽にごちそうしてもらう金額ではない。
有名なホテルのディナーじゃあるまいし、こんなのたかが同級生に奢ってもらうのはおかしい。
しかし辺見くんは動じることなく笑った。


「この金額に見合った料理を出してもらえるといいね」

「い、いいっ。自分の分は自分で払うっ」

「だーめ。僕からの日頃のお礼だから。あ、すみませーん、このディナーコースお願いしまーす」


アタフタしている私なんかには目もくれず、先ほどのイケメンウェイターに声をかけた辺見くん。
メインディッシュを肉か魚にするか尋ねられ、私は魚を、彼は肉にした。


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