窓ぎわ橙の見える席で
アミューズブーシュ。
前菜 小松菜のなめらかピュレ バターの香り カニのジュレとキャビアを添えて。
スープ 甘海老の温かいスープ。
魚料理 アワビとスズキのポワレ トリュフソース。
肉料理 仔牛のステーキ フォアグラムース乗せ。
デザート 爽やかなフロマージュブラン ライチのシャーベット添え。
なんだか懐かしい高級食材がメニューに並んでいるなぁなんて思ったりして。
略式のフレンチレストランも流行っているし、このお店の雰囲気からしてカジュアルフレンチなのかと思ったけれど……お値段は立派なもんだ。
わりと早く届けられた小前菜のアミューズブーシュをナイフとフォークで食べていたら、辺見くんが慣れないからかカチャカチャとフォークで音を立ててしまって困っている。
その様子が面白くてこっそり吹き出してしまった。
「宮間さんって、こういうお店に来ると味には厳しくなるものなの?」
真剣にチマチマとフォークで食べている彼に聞かれて、私はすぐに首を振った。
「ううん。だって味はお店それぞれだから厳しいも何も無いよ。人によって好みも違うし……」
「ふぅん」
会話しながら周りをチラリとうかがう。
値段が値段なだけに若い人は少ないかと思いきや、記念日デートなのかチラホラ若い男女がいる。
やっぱり大切な日は雰囲気のいいお店に行きたいと誰だって思うよね。
「このひと口、一体いくらするんだろうね?」
と、辺見くんがフォークで生ハムをツイと持ち上げてブラブラさせる。
マナー違反だけど彼ならやりかねないと思っていたので想定内。注意はしない。