窓ぎわ橙の見える席で
つつがなく料理が順番にテンポよくテーブルに運ばれてくる。
さすがにこのお客さんの人数にシェフ1人ってわけではないだろうから、アシスタントシェフとの息が合っているのだろう。
手際が良さそうで、仕事が早そうな顔してるもんなぁ、メインシェフ。
壁に飾られているシェフの写真は、某アイドルグループのセンターの人に似ている感じで、31歳にしては可愛らしさを全面に押し出している印象を受けた。
ちょっと気も強そう。
メインディッシュが運ばれてきて、辺見くんが肉料理の盛り付けを不思議そうな顔で色々な角度から眺める。
「これ、この盛り付けで合ってるのかなぁ?」
「………………たぶん」
フォアグラムースを下敷きにして薄切りになった仔牛の肉がピラピラと上に並べられている。予想以上にムースが固めのようだ。
私の方の魚料理だって、ちょっと盛り付けがいただけない。アワビとスズキが重なっている。
このふたつはせめて並べた方がいいような気もする。
「シェフのこだわりなんじゃない?」
「宮間さんならどう盛り付ける?」
「そうね〜、私ならこう……かな」
フォークでアワビとスズキを解体し、斜めに立てかけるようにして並べる。
その上に添え物の白髪ネギを置いて、付け合せのパプリカは手前に配置した。
「わー、すごい。美味しそうな見た目になったね。僕のもやってよ」
辺見くんが楽しそうな表情を浮かべて自分のお皿を私によこす。
もはや子供のようなキラキラした目になっている。
こういうの好きなんだろうな〜。
なんとなく私まで嬉しくなってきて、意気揚々とお肉の配置を変える。
フォアグラムースから薄切りのお肉を外して、扇状にお皿に広げる。
そしてお肉に半分重ねるようにして固めのムースを置いた。
「ね、逆にしただけで立体感出るでしょ?」
「全然違うねぇ」
ほぉ〜、と辺見くんが感動の声を上げた時、真横からコホンと咳払いするのが聞こえた。
これは、さっきの夕方の映画館と同じパターン。
ハッとして顔を上げると、イケメンのウェイターがムスッとした苛立ちむき出しのオーラ全開でこちらを見ていた。