窓ぎわ橙の見える席で
そりゃそうだ。
自分のお店の料理の盛り付けにケチをつけられているように感じるに決まってる。
しまった、やってしまった。
お皿をグイッと辺見くんに押し付けて、「食べるわよ!」と慌ててスズキを口に放り込んだ。
しかしそんなことを気にするわけがない彼は、首をかしげていまだに並び替えた肉料理を興味深げに観察している。
「でも宮間さんが盛り付けた方が美味しそうに見えたよ?教えてあげたら?」
「バカッ!そんなの失礼に決まってるでしょ!ほら、さっさと食べる!」
「フランス料理ってお箸で食べたらダメなの?すごく食べにくいよ」
「正式にはダメだけど、こういうカジュアルなお店では問題ないと思うよ。でもお箸が置いてないってことは使わないでほしいんだろうね」
「そっか〜」
そんな会話を繰り広げながらデザートにたどり着き、そこでも辺見くんは盛り付けにケチをつけていた。
「宮間さん、やってみて」と。
コソッとフロマージュブランを半分に割り、それぞれ倒して斜めに立て直して後ろにライチのシャーベットを置いた。
すると辺見くんは満足そうに笑うのだった。「これなら美味しそう」と言いたげに。
食後のコーヒーを嗜みつつ、彼はウーンと唸った。
いくらなんでもコーヒーにいちゃもんをつけることは無いだろうと思いながらも一応聞いてみる。
「まだ何かあるの?」
「うん、ちょっと。……あのさぁ、宮間さんはここの料理に満足した?美味しいって思った?」
「え?」
驚いて聞き返すと、彼は頬杖をついて退屈そうに口を尖らせた。
「この値段に見合うくらいの料理だったのかなぁ、って。不味くはなかったけどさ」
「まぁ、普通……かな」
「だよね。でもこんなに混んでて人気がある」
「そうね」
「ということは」
辺見くんが私にニッコリと笑いかけてきた。