窓ぎわ橙の見える席で
一重の目、薄い唇、意外と高い鼻。
痩せた体に、ひょろっと伸びている手足。
これは昨日見た彼の姿。
私の脳内でその彼が海明高校の制服を着て、そして身を屈めて何かを覗き込んでいる。
高校のグラウンドのテニスコートの裏にある、小さな沼。
そこに彼がいて、白いワイシャツの袖をまくり上げて一心不乱に沼に視線を落としているのだ。
パッと場面が切り替われば、今度は彼がまたしても制服姿でグラウンドを走り回っている。
野球部やサッカー部の白い目もなんのその、何かを追いかけるように一点を見つめて駆けずり回り、陸上部のエリアで立ち止まった。
そーっとそーっと何かに近づいて、素早く両手で捕まえる仕草をした。
……………………笑顔。
パズルのピースのような記憶の欠片が、ゆらゆらと目の前を揺らしているような感覚になった。
そうだ、それはいつも太陽が沈む前の出来事だった。
橙色に染まるグラウンドを、私は教室から眺めていたんだっけ。
━━━━━で、なんで私はヤツが制服を着ている姿を想像してるんだ?
まさか本当に知り合い?
でも、どうしても高校時代の頃の彼は思い出せない。
昨日見たあの顔で、制服を着ているのだ。
「もしかして、やっぱり変人先生に心当たりある?」
ワクワクしたように仁志さんが期待を込めた目をしているものの、まだ応えられそうなほどパズルのピースが集まっていない。
「でも変人先生って学生時代は目立たなそうよねぇ。教室の隅っこで勉強してそうな感じっていうか〜。ま、それは今も変わらないらしいけどね。息子の話だと授業も教えるっていうよりも自分が楽しんでるらしいから。アハハ、想像ついちゃうから面白いのよね〜!どこか憎めないでしょ、あの人って」
ペラペラしゃべりまくる彼女の話に曖昧に耳を傾けながら、どうも引っかかる『変人先生』というワードを繰り返し頭の中で考えていた。