窓ぎわ橙の見える席で
4 甘くて危険な同窓会
私にも一応いるんです、元カレってやつ
「つぐみ、もうすぐ開場時間だからそろそろ行く?」
一児の母とは思えない美脚をミニワンピから惜しげもなく披露しているてらみが、さっきまで半分くらいあったジンジャーエールを飲み干してイスから立ち上がった。
ブルーのとろみのある生地のミニワンピは、美脚が売りの某ダンスユニットに引けを取らないほどシンプルだけど華やか。
元々華のある顔立ちのてらみにピッタリだった。
この服で同窓会に行くことを許した旦那様……凄すぎる。
そう、今日は同窓会当日。
別に私は待ちに待ってはいないが、参加すると幹事に返信した手前欠席は許されない。
素敵なホテルでパーティーとなればそれなりの服で参加しなければならないので、私も膝丈のノースリーブのワンピースを着てきた。
東京にいた頃、友達の結婚式や二次会などで何回か着用したもの。
淡いベージュとブラックのツートーンカラーで、胸下で色が切り替わっている。身体のラインが出にくいシルエットなので、その点も安心していた。
白い半袖のボレロも持ってきたけど、梅雨明けして暑くなってきたのでバッグの中に押し込んでしまった。
鎖骨のあたりまである髪の毛は緩く編み込んでひとつにまとめて、バレッタで留めている。
……このヘアアレンジは私にはとても出来ないので、元美容師のてらみによるものだ。
「パレスロイヤルホテルの料理……、想像しただけで楽しみすぎる!ね、つぐみ!」
ワクワクしたように小躍りしながら歩道を歩くてらみに、私は「まぁね」と返事をする。
彼女は子育てに追われて毎日手抜き料理ばかりしているらしく、こういう機会を逃したくないのだという。
ちなみにまだ幼い花菜ちゃんは、旦那さんが見てくれているらしい。なんて優しいの、イクメンだわ。
「噂によると、どのクラスもかなりの確率でみんな参加表明してるらしくてさ。人数も相当集まるだろうね」
「うわぁ、そうなんだ」
「つぐみ!料理取るの頑張ろうね!立食だからみんな群がるだろうし、負けないわよ!」
「は、は〜い……」
気合い十分のてらみの気迫に押されつつ、ここはきっとうなずくところなんだと悟って彼女に合わせた。