窓ぎわ橙の見える席で
やがて長ったらしい元生徒会長による挨拶が終わり、「かんぱーい!」というひと声で同窓会がスタート。
それと同時にてらみが視界から消えた。
彼女は素早く料理の前に身体を滑り込ませ、早速物色し始めたようだ。
先ほどの亜希たち3人組と共に、私もお酒を飲みながら料理の列に並んだ。
もう人が多すぎて、何が何だか分からない。
料理はあっという間に無くなって、あっという間に補充される。
どこもかしこも人だらけで、移動するにしても「あ、つぐみ!」と声をかけられたりして足を止めるのであっちもこっちも忙しい。
クラス会でも女子会でもない、学年全体の同窓会ってすごいパワーが必要なんだと実感した。
ある程度料理も確保して、イスの無いテーブルにみんなでお皿を持ち寄ってお酒を片手に立って食べる。
8センチのヒールで立ち続けるのは疲れるけれど、数時間と思えば我慢出来た。
あ、そうだ。
腕時計を見ると同窓会が開始してから20分が経過している。
辺見くんはこの広い会場のどこかにいて、ビールでも飲んでいるのだろうか?
気になったので携帯をバッグから出してメールを送る。
『会場のどのあたりにいるの?』
辺見くんはスマホを使っておらず、いわゆるガラケーを使用している。
彼からしてみるとインターネットは家や職場のパソコンで出来るし、便利なアプリなどの機能にも魅力は特に感じないのだと言う。
携帯は電話とメールが出来ればそれで十分らしい。
だからいまだに彼とのやり取りはメールが多い。
5分ほど待ったけど、返信は来ない。
電話してみた方が早いかな。
てらみも会いたがってたし、早々に合流しておきたいところだ。
昨日帰りに私を家まで送ってくれた時には「スタートまでには行くようにする」って言っていたから、もうここにはいるはずなんだけど……。