窓ぎわ橙の見える席で
辺見くんはテーラードジャケットは着ていなかったものの、それ以外は全て私と一緒に出かけた時に購入したものを身につけていた。
当たり前だけど髪の毛は伸ばし放題の重たいままだったけれど。
一重の目をパチクリさせて、ホッとしたように笑いながら私たちのいる場所へ近づいてきた。
「良かった〜、見つかって。ちょっとお昼寝ならぬ夕寝してたらあっという間に時間が経っちゃって。気づいたら遅刻しちゃったよ。何年かぶりに焦った〜」
凄すぎるタイミングで現れた辺見くんはウェイターさんに声をかけてビールを受け取り、水のように一気飲みした。
見た目とは裏腹な男らしい飲みっぷりに目を奪われる。
そういえばお酒を飲んでいるのを初めて見た。
「同窓会ってこんなに盛り上がるものなの?なんだか違う世界に来たみたいだよ」
「あの〜、辺見くん……」
彼には私しか見えていないのだろうか、横にいるてらみがウズウズしているので彼女を紹介しようと言葉をかける。
「私の親友の寺浜絵美。てらみ」
「てらみでーす!変人くん、私のこと覚えてるー?小中高一緒だったんだよ〜」
元気よく自己紹介したてらみに、辺見くんは笑顔で会釈した。
「どうも、辺見甚です。てらみさん、すみません。覚えてません」
「おいこら、変人っ」
「てらみっ」
わざと怒った振りをして掴みかかろうとするてらみを押さえながら、今度は逆隣にいる大輝くんを辺見くんに紹介した。
「で、こちらが金田大輝くん。高1の頃にクラスメイトだった人で……」
「俺、金田大輝。つぐみと付き合ってました。変人くんは同じクラスになったことないけど、今顔見たら思い出したよ」
いやいやいや、大輝くん!
付き合ってたとか余計な情報を言うんじゃない!
目を見開いて大輝くんをガン見していたら、辺見くんは特にその部分は気にした様子もなくいつものヘラッとした笑顔で
「どうもどうも、僕って案外有名人なのかな?」
と言っていた。