窓ぎわ橙の見える席で
金田大輝、危険人物に認定!
さようなら、きらめいていた私の13年前の記憶たちよ!
「大輝くん。悪いけど、私には無理!付き合ってもいないのにそういうの出来ないのでっ」
さっさとダッシュで退散しようとしたら、ガシッと腕を掴まれて拘束された。
ヒィッという悲鳴を上げなかっただけ偉いぞ、私。
大輝くんの目はネオンの光で爛々と輝いて見えた。女たらしの目だ。こうなってくるとイケメンだろうが元カレだろうが関係ない。
身の危険さえ感じる。
「大丈夫。色々思い出話でもしようぜ」
「いい!思い出とか特に無い!」
「なんでそんなに冷たくなったんだよ。昔は俺もお前も初めて同士でお互いに探り合いながら……」
「こんなとこで何言ってんのよ、バカッ」
非常識極まりない大バカ野郎の手を無理やり解こうと試みるも、ビクともしない。
ヤバい、犯される。
三十路で元カレに犯される。
この年まで独身なんだから、自分の身は自分で守らねば!!
そうだ、大声でも出してみよう。
大きく息を吸い込んだ瞬間、耳をつんざくような女性の怒鳴り声が響き渡った。
「大輝っ!!あんた何やってるのよ!!」
「うわっ、やべぇ!百合香!」
大輝くんが慌てたように掴んでいた手を一瞬で離し、さっきまで背中にまとわりついていた手もどこかへやってしまった。
私はなにがなんだか分からず、声のした方を見やる。
百合香と呼ばれた女性らしき人がこちらへ足早に近づいてくる。
化粧は濃いめでマスカラバッチリ・ 赤リップという強い女メイクの彼女は、きっと一般的に美人に分類されるであろう容姿をしている。
ヌーディーカラーのヒールをカツカツ鳴らしてやって来ると、大輝くんをギロリと睨みつけた。
「怪しいと思ってつけてきたのよ!案の定浮気ってわけね!」
私は怒鳴り散らす彼女の顔をまじまじ見つめてしまった。
見覚えがあったからだ。
この人は……この人は……そうだ、分かった!
「ふ、藤枝さん!!」
名前を呼んだら彼女はキツくメイクしたアイシャドーの濃い目で私をツンと眺める。
明らかに見下していた。