窓ぎわ橙の見える席で
「そうよ。久しぶりね、宮間さん。他人の彼氏に手を出すなんて随分と性格が変わったみたいね?」
腕を組んで、だいぶ偉そうな態度で上から物を申す姿勢なのに、何故か彼女には言い返せない。
同窓会でこそ話はしなかったけれど、高2の時に同じクラスだった人。
資産家の娘で超のつくお嬢様。
学校のマドンナ的存在で、あの頃は本当に可愛らしくて幼気な可憐な乙女だった彼女。
今もベースはそのままだけど、化粧が濃いせいかキツく見える。実際キツそうな口調をしている。
藤枝百合香という名前の彼女とは、同じクラスだったけれどそこまで接点も無くて。
あまり話すこともなく終わってしまった。
「えーっと、大輝くん。とりあえず誤解を解いてくれないかな」
「ごめん、百合香〜!俺には百合香しかいないんだよ!」
「うるさいわね、浮気男っ!こうやっていつも女とイチャついてたのね!」
なるべく冷静に落ち着いて話をしたい私は、大輝くんにきちんと事情を説明してほしくて頼んでみたけれど、全く聞いていない。
それどころか彼は藤枝さんを手放したくないのかひたすら謝っている。
話から察するに、2人は付き合っているようだ。
そして大輝くんは浮気性で、藤枝さんは心配症ってところか。
あんなに清楚だった藤枝さんがこんなキャラだったとは知らなかった。
知らなくていいようなことにも思える。
突然迎えた修羅場をかいくぐってそっと抜け出そうとしていたら、そんな私に気づいた藤枝さんが「待ちなさいよ」と牙をむいた。
「逃げるんじゃないわよ、この泥棒猫!」
「ど、泥棒猫って」
どこかの安っぽい昼ドラじゃあるまいし!
大事な場面で笑っちゃいけないのに、私ったら笑ってしまいそうだ。
そのうち「メス豚!」とか言い出しそう。むふふ。