窓ぎわ橙の見える席で
いやはや面倒なことに巻き込まれてしまった。
よりによって同級生とのゴタゴタに。
よりによってホテル街の真ん中で。
どうするのよ、コレ。
あーだこーだ言い合っている2人のそばから離れるに離れられないでいると、
「みーやーまーさん」
と修羅場に似つかわしくない、平和なのんびりとした声がどこからか聞こえてハッとする。
「へ、辺見くん!」
私が彼の姿を見つけて目を丸くしていると、数メートルほど離れた場所から辺見くんがニコニコとした笑顔をして手を振ってきた。
藤枝さんがボソッと「誰よ、コイツ」と舌打ちするのもしっかり耳がキャッチした。
「いやぁ、探したよ〜。同窓会誘ったの宮間さんのくせに、どこにもいないんだから。帰りくらいは一緒にって思ったのにいなくなっちゃうしさ」
「ご、ごめん……」
ポリポリ頬をかく辺見くんに、ここまでの経緯を説明するのが面倒になりひとまず謝っておく。
もう一刻も早くこの修羅場らしき場所からいなくなりたい。
くるりと体の向きを変えて藤枝さんに帰る旨を伝える。
「とにかく大輝くんとは何も無いので、藤枝さんは安心して。私は明日仕事なのでもうこれで……」
「逃げないでよ」
「別に逃げてるわけじゃ……」
「じゃどういうつもりなのよ!その人、あんたの彼氏でしょ?2人して浮気するつもりだったんじゃない!」
面倒くさいっ!
藤枝百合香がこんなに面倒な女だったとは!
それに辺見くんは私の彼氏じゃない!
全てにおいて勘違いをしているため、どこからどう話せばいいのなら分からない。というか、こんな道端でみっともないと思わないのか!
「宮間さん、大丈夫?」
辺見くんが心配したように眉を寄せる。
大丈夫じゃないから助けて欲しいけどなんと言えばいいのやら。