窓ぎわ橙の見える席で


「きっと毎日美味しくて高カロリーな食べ物ばかり食べているんでしょう、肌荒れも酷いみたいですし、それを隠すための厚化粧も僕ら男にとってはあまり好ましくないんです。それからズケズケなんでも思ったことを言うその性格も、もしかしたら苦手だと感じる人間の方が多いかもしれない。きっと僕も、そちらの金田くんも得意ではありませんね。彼の顔を見ていれば分かります」


まるで学校で授業をするように、辺見くんはペラペラと藤枝さんの欠点らしきものを話していく。
これには彼女だけじゃなく、私も大輝くんも絶句した。


「したがって、あなたが宮間さんに勝っているかどうかという部分では間違っています。おそらく十中八九ほとんどの男は、厚化粧の勘違い口裂け女よりも薄化粧でも十分綺麗な明るい性格の宮間さんを選ぶと思います。もしも逆の人がいたなら、それは……お金目当てってところですかね?」


辺見くんが最後の部分だけ大輝くんを見つめて微笑んだもんだから、藤枝さんの怒りが爆発した。


「なによ!大輝が私を選んだのはお金目当てだって言いたいの!?」

「うーん、そうじゃないのかなぁ?ね、金田くん?金田なだけに」

「バカにしてんじゃないわよ!」


しょうもない辺見くんのダジャレに吹き出しそうになってしまった私をよそに、ムキーッと怒りの限界値を超えてしまった藤枝さんが、バッグからおもむろに何かを取り出した。
紅茶のペットボトルだった。
ピーチの香りがする甘くて女性なら誰もが好きそうなそれは、私も少し前にハマって飲んでいた。


彼女はペットボトルのキャップを素早く外すと、躊躇うことなく中の液体を私と辺見くんにぶちまけてきた。


えっ、と思った時にはもう遅かった。


私も辺見くんはピーチティーまみれになっていた………………………………。






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