窓ぎわ橙の見える席で
正直言って、ラブホテルなるものに足を踏み入れたことは今まで一度も無かった。
よく映画やドラマなんかで映像になったものは見たことがあるけれど、かなり未知数。
思っていたよりも普通のビジネスホテルに近く、あからさまないやらしさは感じられなくてホッとした。
挙動不審になる私とは対照的に、辺見くんはホテルの部屋のとり方も知っていたし、受付も難なく済ませていた。
彼はどうやら来たことがあるらしい。
それはそれで地味にショックを受けた。彼女いない歴と年齢が一緒なんじゃないかと勝手に予想していたから。
服の汚れを取り除いて、綺麗にすすいだあとはドライヤーで乾かす。
備え付けのコードの短いドライヤーの電源を入れて、少し離して服に風を当てる。
すると、背後でドアの開く音がした。
「大丈夫?代わろうか?」
髪の毛が生乾きの辺見くんが洗面にひょっこり顔を出したのだ。
驚きのあまりビクッと肩を震わせたあと、私は必死に平静を装う。
「平気平気〜。辺見くんはそっちで休んでて」
「ちょっと眠くなってきちゃって。宮間さん明日仕事でしょ?少し仮眠でもとったら?僕は明日も休みだし遅くなっても大丈夫だから」
「そう?それじゃお願いしようかな」
私はそう言って、辺見くんと交代することにした。