窓ぎわ橙の見える席で
そうだ、明日は朝から仕事なんだ。
もう普段ならばそろそろ寝る時間にもなる。
両親には同窓会が盛り上がりまくって三次会に参加しているから、深夜にタクシーで帰るとメールしてあるから問題ない。
むしろアラサーの娘を心配など一切していないだろう。
問題は私だ。
さっきからソワソワして、緊張している。
「なんにもしない」って約束を取り付けたのは私なのに、どこかぎこちない。
キングサイズであろう巨大なベッドの隅に横たわり、部屋には他に誰もいないのにバスローブの紐をきっちり固く結んだ。
しばらくゴロゴロする。
辺見くんが付けっぱなしにしていたテレビからバラエティー番組が流れている。
ベッドサイドのランプのほのかな明かりを眺めながら、はぁ〜と大きなため息。
恋人でもない人とホテルって、とんでもないことだ。
大輝くんが女たらしになっていたという事実は置いておくにしても、辺見くんはたぶんその気は無い……はず。
ふと視線をずらすと、小さなプラスチックのケースが置いてあることに気がついた。
ランプの下に分かりやすく置いてあるので、何気なくケースを手に取って「おわっ!」と叫んだ。
これは………………男女がエッチする時に使うアレ!
大変だぁ!!
こんなものあったんじゃ仮眠なんて取れやしない!
そのケースを床にぶん投げて、ベッドと同じキングサイズのフワフワの布団を頭からかぶった。
とにかく寝ようとにかく寝ようとにかく寝よう!
少しだけでも寝よう、明日のために!
かたく目を閉じて寝ることだけを考える。
考える…………
考える………………
考える…………………………
眠れるわけないでしょうが!!
ガバッと身体を起こしたのと同時に、辺見くんが洗面所から出てきた。