窓ぎわ橙の見える席で
「ふぅ〜、ドライヤーで服乾かすの、腕が疲れるから無理だ〜。このまま部屋干しすれば朝には乾いてるんじゃないのかなぁ?」
腕をぐるぐる回したあと、彼は私のワンピースと自分のシャツをハンガーに掛けている。
私はその様子を見て「は?」と聞き返した。
「な、何言ってるの?朝には乾いてる……って泊まるわけ?」
「うん。フロントに休憩から宿泊に変更の電話入れるから、宮間さんはそのまま寝るといいよ」
「辺見くんは?どこで寝るの?」
「どこって…………ベッドで寝ちゃいけない?」
のんびりした口調で話す辺見くんにイラッとして思わず声を荒らげた。
「お、おかしいでしょ!」
「大丈夫、大丈夫。おかしくない。ベッド広いし、2人でも悠々寝れるでしょ?」
サラッとかなりすごいことを言ってのけた彼は、涼しい顔でベッドサイドに近づいて電話を取る。
さっき言っていた通り、休憩から宿泊への変更の連絡をしていた。
電話のやり取りを、私は固唾を飲んで見守った。
「はい、連絡終わり。ということで寝よう」
辺見くんは受話器を置いて、ベッドに上がろうとしてくる。
飛び跳ねるようにして彼からなるべく遠ざかるために隅っこへ移動した。
ところがなかなか彼はベッドへやって来ない。
何やら床にしゃがみこんでゴソゴソしている。
「ど、どうしたの?虫でもいた?」
と、話しかけてみると。
彼は笑顔で何かを持って立ち上がった。
それは、私がさっきぶん投げたケース。すなわちアレ。
「落ちてたから拾ったの」
「そ、そ、そ、そ、そっか……」
もうこれ以上は何も言えず、巨大なベッドの縁ギリギリまで身体を寄せて空けることしか出来なかった。