窓ぎわ橙の見える席で
パチンと音がして、部屋が暗くなった。
辺見くんがベッドサイドにあった電気のスイッチを押してくれたようで、就寝体制をとってくれたらしい。
おやすみ、と言おうとしたら、その前に辺見くんがつぶやいた。
「こうやって寝るなんて、なんだか小学校の野外活動みたいだね」
「………………そうだね」
「宮間さんとは小中高ずっと同じ学校だったのに、クラスが一緒になったのは高校2年の時だけだったよね」
「うん。でも私は辺見くんのこと、知ってたよ」
「どうして?」
「有名だったもの、あだ名が」
一度聞いたら忘れられない、変人くん。
彼は楽しそうに笑った。
真っ暗なのに、その声を聞くとどこか安心する。
「今日…………ありがとう」
私はさっき言えなかったお礼を伝えた。
少し離れた場所から「ん?」と聞こえる。
「助けてくれて、ありがとう。隙を見せた私が悪いんだろうけど、まさかあんな人になってるなんて思わなかったな……」
「元カレ?」
「うん、そう。ちょっとかっこよくなったからって調子に乗っちゃったのかな」
「僕としては彼の恋人の方がインパクト強かったけどね」
「あはは、藤枝さんね!ドSっぽいよね〜」
「僕はあのタイプは苦手だなぁ」
あの物凄い修羅場を思い出して、私たちは笑った。
しばらく笑い合ったあと、仰向けに体勢を変えて彼に尋ねた。
それは、助けてくれた時に気になったことだった。
「ねぇ、どうして辺見くんはあの場にいたの?」