窓ぎわ橙の見える席で
辺見くんは急に黙り込んだ。
あれ……私、何かまずいことでも言っちゃった?
それとも━━━━━。
どうしようかと思案していたら、ギシッとベッドが揺れる音がした。
考えごとをしていたのが途切れてしまって、代わりに全神経で身体に伝わる振動の行方を探る。
キングサイズの大きなベッドの端と端に横になっていたはずの私たち。
だけど気のせいだろうか、すぐそばに彼の気配を感じるような気がする…………。
「宮間さんのことが心配だったから、ついてきたの。それだけ」
気のせいなんかじゃなかった。
辺見くんは私のすぐ隣に移動してきていた。
真っ暗闇でも分かる、彼の近づく声。
途端に胸がドキッとしてしまい、身を縮こませた。
私のことが心配だなんて、そんな言い方は困る。
そんな風に言われたら勘違いしそう。
とても甘くてちょっと切ない感情が心を包み込む。
「今日の僕はツイてる」
「……え?何が?」
ポツリとつぶやいた辺見くんの言葉を理解出来ず、私は何も思わずに聞き返した。
すると、少し楽しそうな声色で彼が囁いた。
「今夜、僕は宮間さんを助けてあげたでしょ?だから、お礼をしてほしいの」
「お礼?」
「うん。動かないでね」
なんだなんだと戸惑っているうちに、辺見くんの腕が真横から伸びてきて私の身体に回された。
予想外の展開に怖気づいて身をよじる。