窓ぎわ橙の見える席で


「な、何してんのよ変態っ!なんにもしないって約束でしょ!?」


まぁ自分でもよくそんな可愛くないことが言えるなぁと感心するような言葉が口をつく。
しかしながら辺見くんはちっとも動じていない。


「なんにもしないよ?お礼してもらうだけ」

「無理!期待に応えられるほどの美ボディじゃないし!」

「大丈夫。十分あったかくて柔らかいし、それから」

「い、いいっ。言わないでっ」

「じっとしてて。抱き枕代わりにして寝たいだけ」

「だ、抱き枕!?」


ポカンとして口をあんぐり空ける。
いや、おそらくヤツからは私の表情なんて見えないんだろうけど。


「私は猫じゃないの!人間なんですがっ」

「知ってるよ。死ぬほど気持ち悪くて一晩耐えられそうにないなら言って。離すから。嫌じゃないなら……」


辺見くんは腕に少しだけ力を込めて、私の身体をギュッと抱きしめた。


「今日はこうしていたい」


………………それってどういうつもりで言ってるのかな。
私は猫の代わりなのかな。
同窓会で気を遣って(1ミリも気遣いをしている様子は見なかったけど)疲れたってこと?


「色々あったけど結果として宮間さんを守ることが出来たし、こうやってのんびり出来た。ね?ツイてるでしょ?」


彼は私がどんな顔をしているかなんて、きっと知らない。
早鐘みたいに鳴り続ける心臓の音と闘い、この音を聞かれるんじゃないかという不安とも戦い……。
心身ともにみっともない状態だったのだ。



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