窓ぎわ橙の見える席で
「そうだ、オーナー。こういうのはどうですか?」
私は今しがた書き込んでいたノートを開いてオーナーに見せて、言葉を続けた。
「定食みたいに、デザートも日替わりにするんです。そうすると毎日通ってくれる人も毎日新鮮な気持ちになれますよね?」
「なるほど!それはいい考えだねぇ。でもつぐみちゃんが大変じゃないのかな」
「さっきも言った通り、簡単なものしか作れませんから。大変じゃないですよ。ただしプリンより材料費はかかりますから、定食は850円から900円に値上げ。どうでしょう?」
「どうでしょう?」
すぐには決められないのか、オーナーが助けを求めるように奥様の涼乃さんを見やる。
私たちの会話をしっかり聞いていた涼乃さんは、ニヤリと笑みを浮かべた。
「いいじゃない。その代わり、一流シェフの手作りって銘打つわよ?」
「…………………………が、頑張ります……」
「ふふふ、交渉成立〜」
しまった、余計なプレッシャーを自分にかけることになってしまった。
でも定食にデザートをつけてあげるお店って、そうそう無いと思うんだよね。
それを今まで850円で提供していたなんて、どれだけ良心的なお店なんだろうって。
900円になるくらい、どうってことはないと思うのだ。
数え切れないほどの常連客もいることだし。
「じゃあ、価格変更とデザート変更は来週からにしようか。それでよろしく頼むよ」
「了解しました」
オーナーの言葉に、私は笑顔でうなずいた。