窓ぎわ橙の見える席で


新しいタブレット端末の初期設定だとか、情報登録なんかの私にはチンプンカンプンな部分は辺見くんに全てお任せすることにした。
機械オンチの私は大人しく座って……いるというのも申し訳なかったので。
おずおずと申し出た。


「辺見くんがその作業やってる間、なにかご飯でも作ろうか?」

「…………え!!いいの!?」


人ってこんなに嬉しそうな顔をするんだって思うくらい、辺見くんは満面の笑顔になった。
くそぅ、その笑った顔にグッと来ちゃってる私。
こんなはずじゃなかったのに。
昔は彼の笑顔に1ミリもときめくことなんてなかったのに!


「冷蔵庫に何があるか見るね」


と、リビングからキッチンに出て、小型の冷蔵庫を勝手に開ける。
慌てたように辺見くんが私を追いかけてきて、後ろから一緒になって冷蔵庫をのぞき込んできた。


「………………ごめん。冷蔵庫……、ほぼからっぽ……」

「そのようですね……」


あるのは卵と、1週間前に賞味期限が切れたとろけるチーズ、そしてタッパーに入った大量のご飯。
あとは調味料はまぁまぁ揃っているのは見て取れた。


「ど、どうにかします……」

「さすが宮間さん!お願いね」


もうこうなったら卵かけご飯でも出してやろうかと思ったけど、そんなの料理人として絶対やっちゃいけないやつ。
ひとりならそれで済むけど、せめてもう少し手を加えたものを食べて欲しい。


辺見くんが猫と戯れながらタブレットの設定をせっせとしてくれている間に、私もキッチンでチマチマと料理に励んだ。
なんかちょっと彼女っぽいなーなんて1人でデレデレしながら。


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