窓ぎわ橙の見える席で
「宮間さんに再会してからは、あなたが作るご飯を食べに行くことが僕の唯一の楽しみだったんだよ。お弁当だってどうでもいい子に頼んだりしないし、帰りに家まで送るのも好きだからやってた。でも僕は昔から変人って呼ばれてるし、きっと恋愛対象じゃないのかなって思って」
突然始まった告白は、私が口を挟む余裕など無かった。
もともとおしゃべりな辺見くんなので、大事なシーンだというのに楽しそうにヘラヘラしながら話す。
「僕の好きなものを知って欲しくて、毎日ひとつかふたつ、何か生物の話をしようと思ってね。だから話したものには本に印をつけてたの。さっきの付箋はまさにそれだよ。同窓会の日に成り行きでホテルに行ったのも、すごーーーく我慢したんだから褒めてほしいくらいだ」
「だってあれは……私は猫の代わりってことだと思って」
モゴモゴ抵抗していると、「バカだな」と辺見くんに遮られた。
「アンは好きだけど、宮間さんはもっと好きだよ」
………………おかしいな。
私、目が変なのかな。
なんだか辺見くんのことがかっこよく見えてきたぞ。
これが恋は盲目って言われる所以なのか。
なんにせよ、好きになったらその人が一番なのだ。
彼が何気なく散りばめた言葉のどこかに、必ず優しさと温かさと、そして私を想う部分があったんだ。
なんとなく気づいていたけれど、気づかない振りをしていたのかもしれない。
適度な距離がちょうどいいと言い聞かせて。
「宮間さんは?僕のことどう思ってる?」
私が出す答えなんて、きっと彼も分かっているはずだ。
それでも催促してくるなんていい性格をしている。
「嫌じゃないからこうして会ってるのよ。嫌じゃないからお弁当作ってるのよ。……嫌じゃないから…………家に来たのよ」
素直じゃないのでそう答えると、それはそれは不満そうに辺見くんが眉を寄せた。
「答えになってない。5秒で答えないと押し倒すよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ!好き!好きです!好きだから!」
慌てて気持ちを伝えると、彼は満面の笑みを浮かべた。