窓ぎわ橙の見える席で
私の選ぶ道
有言実行と言うか、なんと言うか。
本宮圭造という男は、言った通りのことをやりに来た。
私に会いに来た翌日に、しかも真っ昼間に。トキ食堂へやって来たのだ。
「やー、どうもどうも初めまして!本宮圭造と申します!ランチタイムが終わったら少しお話させてもらえませんか?」
しっかりお昼の定食を平らげた後、厨房にいるオーナーにちゃっかり話しかけてきた本宮さん。
彼に話しかけられたオーナーも人がいいから断らない。
「あぁ、はいはい分かりました〜!取材ですね、なんの雑誌かなテレビかな〜?全国版も承ります〜!あと30分くらい待っててくださいね〜!」
「あ、取材ではありま……」
「はい、定食2つお待ちぃ!」
馬車馬のように働かなくてはならないランチタイムなので、本宮さんの話は半分程度しか聞いていない様子。
オーナーは次から次へと入るオーダーをさばきながら、少し暑苦しさを感じるウィンクをバチッと本宮さんに向けていた。
「あらやだ。厨房の写真撮るかしら?それならバッチリ化粧してくれば良かったわ〜!なんてね!」
パートの仁志さんまで取材だと思い込んできゃあきゃあ騒いでいる。
そうじゃないと否定したかったけれど、私は苦笑いだけ返してオーダーの通りに料理を作ることしかできなかった。
これからオーナーたちが話す内容が私のことだなんて……きっと夢にも思っていないだろう。