窓ぎわ橙の見える席で
6 窓ぎわ橙の見える席で


━━━━━半年後。


私は駅の北口から歩いて5分ほどの「隠れ家」というのがピッタリな小洒落たフレンチレストラン・ポッシュで働いていた。
ロッジ風のあたたかみのある木造のレストラン。
そこにさりげなくフランスの国旗を掲げており、フランス料理を提供していることを示している。


「つぐみちゃん、明日のラム肉の下ごしらえは終わってる?」


オーナーである本宮さんにそう声をかけられ、私は即座にうなずいた。


「ラム肉も仔牛も終わってます」

「それと……」

「アスパラのポタージュは仕上げ手前まで出来てますし、バジルとガーリックのソースも仕込みは終わりました。それからキッシュの材料も……」

「つまり、全部終わったってことかな?」


確認するような問いかけに、私はハッキリとした口調で「ハイ!」と元気よくうなずいて見せた。


「つぐみ、本当に手早いから助かっちゃうわ」


同僚のオネエシェフの田子さんが横でクネクネしながらウインクを飛ばしている。
彼……彼女?の、この話し方にももう慣れた。
もうひとりの見習いシェフの幹子ちゃんは今日はお休みだ。


わりとキャラの濃い人が多いこのお店で、私はなんとかやっている。
トキ食堂を辞めて4ヶ月。
食堂に次の調理師が来るまで働くということを決めて勤めていたので、辞めるまでに2ヶ月を要したのだ。


それからこちらのポッシュで入職テストという名目でコース料理を作り、めでたく採用となった。

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