窓ぎわ橙の見える席で
「宮間さんは知らないと思うけど、隣の席になってよく話すようになった頃、僕はあなたのことを好きになってたんだよ」
コーヒーを飲みながらのほほんと話す辺見くんの発言は、私にとってはかなり驚きだった。
「それは…………気づかなかった。あの頃から恋愛には興味無いって言ってたし」
「だって宮間さんには彼氏がいたじゃない。僕とは真逆のタイプの。あれに太刀打ちしようとは思わないよ」
彼と同じコーヒーを口に運んで、確かにそうよね、と返す。
サッカー部の明るいモテ傾向にある大輝くんと、生物部の暗くはないけどおしゃべりな非モテ傾向にある辺見くん。対極にある2人な気もする。
それなのに巡り巡って、両方と付き合うことになろうとは。
「今思えばさ、私もあの頃好きだったのかも。辺見くんのこと」
高2の自分を思い出しながら素直な気持ちを言ってみる。
教室の窓から、夕焼けに染まる橙色のグラウンドを見下ろして誰を見ていたのか。
当時なんとなく付き合ってた人なんかじゃなくて、好きなものを追いかけて目を輝かせていた辺見くんを見ていたのだ。
あれは、恋だったのかもしれない。
普通の男の子とはちょっと一線を画した、風変わりな彼から目が離せなくて。
それで遠くから見ていたのかもしれない。