窓ぎわ橙の見える席で


その会話をキッカケにして、私はなんでもないことでも彼に質問をするようになった。


「ミドリは元気?」

「うん、今日も元気だよ。クーラーの効いたじいちゃんの部屋に引きこもってる」

「あ、またシャーペン変わってる」

「そうそう、これ新商品なの。昨日の帰りに大和商店で見つけて買ったんだ」

「最近は何に興味あるの?」

「ハリガネムシかな」

「海には行かないの?」

「波の音とか、白い砂浜の粒は好きだよ」

「水着の女の子は?」

「……………………まぁ、嫌いではない」

「好きなんだ」

「………………興味無いこともない」

「ふ〜ん。興味あるのね」


時に意地悪なことを聞いたりもしたけど、辺見くんは嫌な顔ひとつせず丁寧に答えてくれた。
そしてついでに要らない情報もくれる。


「その辺に落ちてるゴミってさ、いつ誰が拾って捨てるんだろうね?僕はそれが気になって、あんぱんの包み紙を一日中見ていたことがあるよ」

「それはどうなったの?」

「ずっと放置され続けて、結局夕方になっちゃったから僕が拾った」


最初から辺見くんが拾えば良かったんじゃないの?


「ミネラルウォーターは軟水派なんだ」

「なんで?」

「マグネシウムとカルシウムの含有量が低くてね、まろやかで角が無くて飲みやすいからなんだ」

「はぁ……」

「色んな種類のミネラルウォーターを買って、飲み比べするのがマイブームでね」

「ほぉ」

「宮間さん……。僕の話、興味無いでしょ?」


さずかの変人くんも、私の表情でそれくらいは分かったらしい。
苦笑いを返しておいた。


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