窓ぎわ橙の見える席で
そんなん言われたら気になるじゃないか!
グロいって言ってたけど、どれくらいグロいんだろ?
カマキリのどこから出てくるの?
ヤバい、気になって仕方ない。
ちょっとだけなら見てもいいかな。
ほんのちょっとだけ━━━━━。
薄目を開いてバケツの中で起きている光景を目にした私は、瞬間的に目を見開き、息が詰まり、ショック過ぎてその場でぶっ倒れてしまった。
「僕が悪かったね。もう二度とハリガネムシの話はしないようにするよ」
「ううん……。こちらこそごめ……オエッ」
「大丈夫?」
「だ、だいじょオエッ」
保健室に運ばれた私を、目が覚めるまで待っていてくれた辺見くん。
謝りまくって反省している彼に申し訳なかったけど、あの衝撃的な光景を思い出すたびにオエオエした。
本当に少しだけど、彼の興味あるものや好きなものを覗いてみたいと思ったのが間違いだった。
頭が良くて、記憶力もいい彼の思考回路と並ぼうと思ってはいけなかったのだ。
その証拠に、私が彼を質問攻めすることはあっても、彼が私に質問をしてくることは一度もなかった。
私には興味が無いということだ。
それから私は、放課後によくグラウンドをうろついている辺見くんを教室から眺めることが多くなった。
彼は虫を捕まえたり、沼の水を採取したり、怪我をした鳥を助けたり。
運動部に紛れてうろちょろしている姿は、どこか微笑ましくて憎めない。
それは決まって、夕焼けの橙色に染まる時間帯だった。