窓ぎわ橙の見える席で


学校の先生って、やっぱりものすごく激務なんだろうか。


だって辺見くんはどこからどう見てもやつれていて、疲れ切っていて、睡眠不足のようだ。
4月は残業が続いていたって本人も言っていたし、それがずっと続くようなら体がもたないんじゃ……。


ランチタイムも落ち着いたので、私は仁志さんと例のごとく潮風を受けながら暖かい日差しの下でお弁当を広げていた。


「変人先生ってね」


ちょうど辺見くんのことを考えていたところへ、仁志さんの声が聞こえて我に返る。
玉子焼きを箸でつまんだまま、彼女の方を見やった。


「あの人、あぁ見えて仕事熱心なのよね。生物のテストで点が取れない生徒には、その生徒の苦手分野がきちんと克服出来るように丁寧に補習してくれるし、分かるまでとことん付き合ってくれるのよ」

「へぇ〜、意外……」

「……な〜んて、うちの息子が生物が苦手でね!それで先生にはだいぶお世話になったのよ!」


そばにある自販機で買ったブラックコーヒーを飲みながら、仁志さんの話に耳を傾ける。


「先生は偏屈だし、生物のことになると目の色変わるし、授業も自分が楽しくてやってるっていうのは周知のことらしいんだけど。ちゃんと生徒のことも見てくれてるのよねぇ〜。あれで彼女とか奥さんがいれば少しは体調管理もマシになるだろうに……」

「あの〜、やっぱり辺見くんって体調崩したりするんですか?」

「インフルエンザには毎年かかってるわね。それから胃腸炎で休むことも多いわ」

「…………………………やっぱりそうなんですね〜」


案の定、というかなんというか。
あの顔色と痩せ具合では、免疫力があまり無いのはうなずける。
夜ご飯をトキ食堂で食べるにしても、4月みたいに全然来れないことがあるなら意味無いじゃない。


ヤツの寿命は短そうだな、と失礼なことを考えてしまった。


< 36 / 183 >

この作品をシェア

pagetop