窓ぎわ橙の見える席で
「僕は……僕は…………、なんて罰当たりなことを……」
フラフラと地面にぶちまけられたまかない料理のトマトライスを見下ろしてガックリうなだれる彼の姿を見て、私はプッと吹き出してしまった。
「あははは、なんで辺見くんが落ち込んでるの?」
「そりゃ落ち込むよ!宮間さんの料理が無駄になってしまったんだから」
「落としてしまったものは仕方ない」
「僕のせいで……ごめん」
確かにあなたがクラクションさえ鳴らしたりしなければ私もビックリしなかっただろうけど。
でもそれとこれとは話が別だ。
バッグからビニール袋を取り出して、とりあえず拾えるだけ拾っておいた。さすがにこのまま放置して帰るわけにもいかないので。
あとは明日、小鳥さんたちがエサにしてくれると信じよう。
辺見くんもこの作業を手伝ってくれた。
「ねぇ、まだ帰ってなかったの?」
私よりも1時間ほど早くお店を出ていったはずよね、と不思議に思いながら彼に尋ねてみた。
すると彼はコクンとうなずき、
「宮間さんに謝らないとな、って思って待ってたんだよ」
答えた。
「謝るって、何を?」
「さっきの新田さんの件で」
「オ、オ、オ……、オバサン呼ばわりされた……こと?」
「………………気にしてたんだ」
「どうせオバサンですよっ」
分かってますよ、もうすぐ三十路。
独身で彼氏もいない、今のところ負け組ってことくらい、よ〜く分かってますから。