窓ぎわ橙の見える席で


うだうだ言い合って、結局私たちが食べたい焼きそばのメニューが決まった。
2人とも選んだのは『海鮮焼きそば』。
薄味の焼きそば麺の上に、塩味の効いた海鮮たっぷりのあんかけがかけられているというもの。
写真だけでヨダレものだった。


少盛りは無いけれど大盛りならプラス料金であったので、それを頼んでシェアしようということになった。


「あの子……新田さんだっけ?辺見くんのこと好きだったんだね〜。今頃泣いてるんじゃないのかなぁ」


焼きそばを待つ間、鉄板の煙を目の前に数時間前の出来事を思い出しながらそんなことをつぶやく。
もちろんそれは辺見くんの耳にも入っていたらしい。


「泣いてないよ、きっと。だって彼女、本気じゃないもの」

「なんでそんなこと分かるのよ」

「高校生特有の、教師への憧れ」

「私は高校生の頃は先生に憧れなんてしなかったわよ」

「宮間さんは付き合ってる人いたもんね」


うっかり飲んでいたお冷やを吐き出しそうになった。
なんで辺見くんがそこまで私の個人情報を知っているのか!
仰々しい目つきで見ていたからか、彼は吹き出していた。


「僕ね、記憶力いいの。違うクラスのナントカくんと付き合ってたよね、サッカー部の」

「でも1年足らずで別れちゃったけど」

「そうなの?よく放課後に窓からグラウンド見てたよね。あれって彼の練習見てたんでしょ?」

「あ、あれは……」


おいおい、この人の記憶力はどこまで凄いのよ。
まさか辺見くんを見てたなんて言えるわけもないし、この場では肯定しておいた方がいいのかな。

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