窓ぎわ橙の見える席で
答えを濁しているうちに、辺見くんは次の話題を持ってくる。
こういうところは昔から変わっていない。
私の答えなど特に興味は無いのだということの何よりの証でもある。
「とにかくね、小牛田先生のことは置いておくにしても。今日はたまたま新田さんを連れてトキ食堂に行ったんだけど、うまい具合に宮間さんを彼女だと勘違いしてくれて助かったよ。突然のことで申し訳なかったけど」
「私は別にいいんだけど……。あのさぁ、辺見くん。まさかとは思うけど、そうなることを予想してうちのお店に来た……とかじゃないよね?」
「ん?」
空良ちゃんがそのようなことを言っていたから、なんとなく辺見くんにカマをかけてみただけのこと。
彼のことだから即答で否定するだろうと思って。
だがしかし。
辺見くんは口元に笑みを浮かべたまま、私を見つめるだけだった。
「……………………え?」
「ん?」
「いや、ん?じゃないわよ!答えになってないじゃない」
「知らなかったの?僕って意外と計算高い男なんだ」
そんな面と向かって宣言されましても。
思っていたよりもボケッとしているだけの男ではないということだけはよ〜く分かりました。
チクリと嫌味を言ってやりたくなって、ついつい口から本音が漏れる。
「いまだに恋愛に興味無いんだね。胸を張って紹介できるほどの彼女とかいないわけだ……」
「そういう宮間さんこそ、ねぇ?」
「仕方ないでしょ。こればっかりは……、今まで仕事が忙しくてそれどころじゃなかったんだから。恋愛することを放棄しただけよ」
あなたと違って興味はありますから、とつけ加えてやった。