窓ぎわ橙の見える席で
フルコースは無理だけど、とりあえず冷蔵庫にあるもので冷えても美味しいものを、と三品作った。
かぼちゃのポタージュ、鶏もも肉と生ハムのコンソメテリーヌ、それからバルサミコ酢風味のホタテとエビのトマト詰め。
これならあとで旦那さんが食べても美味しい……はず。
旦那さんの分は取り分けて冷蔵庫へ入れて、私たちが食べる分をお皿に盛り付ける。
平面にならないように立体感が出るように盛り付けて、ソースがある料理はお皿との空間を生かしたかけ方をする。
それらをテーブルに並べたら、てらみが歓喜の声を上げた。
「うわっ!ヤバッ!思ったよりも本格的なフランス料理なんだけど!」
「失礼な。まさに本格的なフランス料理だよ」
「超〜感動!!ちょうど花菜も寝たし、食べよ食べよ〜」
てらみは娘の花奈ちゃんをベビーベッドにそっと寝かせて、軽い足取りで冷蔵庫からジュースを取り出す。
授乳中なのでお酒は飲めないらしい。
「つぐみは?ワインでも飲む?」
「ううん。てらみと同じのでいい」
「そ?じゃあジンジャーエールにしよ」
少しでもお酒の気分を味わいたいらしく、てらみはジンジャーエールをワイングラスに注いでいて吹き出しそうになった。
「ねぇ、こんなん家で食べられるなんて泣けるほど嬉しいわ。毎週来てよ」
「そんなに喜ばれるとは思ってなかったわ」
2人でグラスをコツンと合わせて、乾杯する。
グビッとお酒のようにジンジャーエールを喉に流し込んだ。
トマトに詰め込んだホタテとエビをまじまじと眺めつつ、てらみが感嘆の息を漏らす。
「缶詰のホタテと冷凍のエビでこうなるとはね」
「レシピ教える?」
「ううん、また来て作って」
「おいっ」
私のツッコミにてらみは笑っていた。
こうしてなんでもないことで笑い合っていると、学生時代に戻ったみたいで楽しくなった。