窓ぎわ橙の見える席で
食事をとりながらお互いの近況報告やらなんやらをしているうちに、私は辺見くんの話を彼女にしていた。
てらみは最初のうちは辺見くんのことを思い出せなかったようだったけれど、「変人くんのことよ」と言ったら手を叩いた。
「……あ〜!!変人くんね!!うそ、あいつ教師やってんの?意外すぎる」
と、まぁ私も最初に思ったことを彼女も思ったらしかった。
「じゃあ変人くんはトキ食堂の常連なワケだ」
「ま、そういうこと」
「高校の頃は夢にも思わなかったでしょ、12年後にヤツと食事デートするなんてさ」
しょ、食事デートだと?
「えっと、あえて訂正させてもらいます。食事デートではありません。お詫びにごちそうしてもらっただけ。話聞いてた?」
私の不満げな顔に気づいたてらみが、ニタニタと嫌らしい笑みを顔に貼り付けて首をかしげた。
「理由はなんであれ、それは立派な食事デートでしょ」
「オッサンばっかの焼きそば専門店だったけどね」
「さすが変人くんだわ〜、期待を裏切らない」
おおかたてらみの頭の中では、高校時代の変人くんがサッパリとした好青年に生まれ変わり、シャキッとしたファッションで教鞭をとっている姿でも想像しているのだろう。
声を大にして言いたい。
教師だからと言って清潔感に溢れている人ばかりではないということを。
その代表格がヤツである。
「で?どうよ、変人くんは。男として」
期待を込めた目で私を見つめるてらみに、「バッカじゃないの」と口を尖らせた。
「無い無い。別に悪い人じゃないわよ。可もなければ不可もない。でもあれは無い。もっと髪の毛切って、身支度をしっかりしてマシな服来て、靴とバッグも新調してもらわないと」
「そうすりゃ有りってことかい、つぐみ」
「ち、違うわよっ!もう!あぁ言えばこう言うんだから!」
くそぅ、ラチがあかないわ、てらみには昔から絶対に口では勝てないんだから。