窓ぎわ橙の見える席で
ジンジャーエールでゲフッとゲップを披露したてらみは、ニッコリ微笑んで私に何かを言わせたいらしい。
「他の地元のめぼしい奴らは大体結婚しちゃってるしさ、ここに永住するなら恋人くらい欲しいでしょ?」
「いらなくはないけど欲しくもない」
「ちょうどいいじゃないの、変人くんなんて他に女なんて寄り付かないだろうし」
「モノ好きがいるかもしれない」
「あんたのご飯を毎日食べに来てくれてるのよ?」
「私じゃなくてトキ食堂のね」
「美味しいって言ってくれたんでしょ?」
「そんなのてらみだって言ってくれたじゃない」
てらみの作戦になんて乗るもんか。
友達歴23年をナメちゃいかんよ、てらみさん。
しかしそう思っていたのは私だけではないようだ。
「変人くんに興味あるんでしょ?」
「……………………………………興味?」
思わず否定するのを忘れて聞き返していた。
私がはねつけなかったからか、てらみは大喜びで満面の笑みを浮かべる。
「高校の時、つぐみは変人くんに興味持ってたでしょうが。やたらと話しかけてた時期もあったし。今はどうなのよ?」
「いや、興味は……無くはないけど、それは異性としてじゃなくて面白い人っていう認識で」
「この会話、高校時代にも似たようなのした気がするわ」
「今さら思い出してどーすんの。……とにかく!」
花菜ちゃんが寝ているのでなるべく大きな声は出さないように気を使いながら、私はてらみにビシッと言い切った。
「辺見くんは友達。それだけ。いいわね?面白おかしくくっつけようとしないで。そこまで男に飢えてない」
「………………は〜い」
渋々ながらもてらみはうなずいていた。