窓ぎわ橙の見える席で
ラストオーダーを経て、21時に食堂は閉店した。
辺見くんはもちろん、他に残っていたお客様もみんな帰った。
しんとする店内で、いつもと同じ風景が広がる。
涼乃さんと空良ちゃんがホールのテーブルを拭いて回り、オーナーはレジの会計締め、私は厨房の片付けと明日のメニュー決めと仕込み、そしてまかない料理作り。
大きめのタッパーに余った料理を詰め込み、ご飯はそれぞれおにぎりにしておいた。
空良ちゃんには少し多めにミルクレープも入れておく。そうすると彼女はとても喜ぶからだ。
私の分はいつもそんなに量は取らない。
家に帰っても両親は食事を済ませた後だし、夜は私も多く食べないので少量でいいのだ。
だけど万が一、本当に本当に本当に万が一の話になるけれど、辺見くんが外で待っていたとしたら。
なんとなく手ぶらで家に送ってもらうのも悪いので、それならばまかない料理をあげた方が彼も喜ぶ。
先ほど夕食は済ませたから朝に食べてもらってもいいわけだし。
……って、ヤツが私を待っている前提で、しかも家まで送ってくれる前提で考えてしまうこの頭。
どうなってるのよ、一体。
どうしちゃったのよ、私。
きっとこの間の休みにてらみに変なことを言われたから妙に意識しているだけだ。
「俗に言う運命の再会なんじゃないの〜」なんて言うから。
違う違う。断じてそれは無い。
高校時代の友人と再会できて喜んでるのよ、それの何がいけないの?別にかまわないはずだ。
いそいそとタッパーをカウンターに置いて、明日の定食メニューとデザート分に必要な仕入れの材料をノートに書き込んで仕事を終わらせた。