窓ぎわ橙の見える席で
今日はパートの仁志さんがお休みだったので、私は1人で外に出てお弁当を食べていた。
いつもの古びたベンチに腰かけて、膝の上にお弁当を広げてのんびり食べる。
海岸線に沿うように植えられた木々がゆさゆさ揺れていた。
正面に広がる海。
そこから吹き付ける風を全身に浴びながらボーッと海を眺めていると、色々なことを考える。
明日の定食の内容はどうしようか、デザートはどうしようか。
おばあちゃんの仏壇にお供えする定食は何にしようか。
暖かくなってきたから、一緒にお供えするのは熱いお茶じゃなくて冷たいお茶の方がおばあちゃんも喜ぶかな。
次の休みにはちょっと足を伸ばしてショッピングモールにでも出かけて、久しぶりに買い物でもしようか。
…………辺見くんは生きているのかしら。
一瞬、頭の片隅にユラ〜ッと細身の人が見え隠れした。
白ご飯に味噌をつけて生きながらえているのだろうか、彼は。
畳の6畳ほどの和室に、敷きっぱなしの布団。
それからまぁるいちゃぶ台がちょこんと部屋の隅っこにあって、そこには分厚い本。
部屋に不釣り合いなでっかい本棚には生物に関する本が並ぶ。
そんな部屋で大きなお茶碗に白ご飯を盛って、辺見くんがもそもそ食事をしているという非常にひもじい姿を勝手に想像してしまった。
私ったら変な妄想までしてしまうとは。
同級生として心配してるだけよ。それ以外何も無い。
インゲンのおひたしを食べながらブンブンと頭を何度も振って、時々ひょっこり顔を出す辺見くんを追い払った。