窓ぎわ橙の見える席で
それにしても、セキュリティを作動させてしまった私って……。
危うく警察沙汰になりかねないことをやらかしてしまうところだったらしい。
夜中の学校に忍び込むなんて軽率だった。
うっかりミスとか言う可愛い表現は当てはまらないこの状況に肩を落としていると、デブゴン先生(本名忘れちゃった)が「こちらへどうぞ〜」と愛想よく校舎の中へ私を入れてくれた。
「もしかして変人先生の彼女ですか?こうしてわざわざ来てくれる人がいるなんて……大嘘つきだなぁ、彼女いないって言ってたのに」
しまった、「彼女がいない」という事実にホッとしてしまった!
なんなのよ、私ってば!
「えーと、とりあえず私は辺見くんの彼女ではありません。単なる同級生です」
「そうなんですか!?な〜んだ、てっきり彼女かと……」
「やめてくださいよ、私はもっと男らしい体つきの細マッチョな人がタイプですから。あんなガリガリ君はごめんですね」
「変人先生痩せてますもんねぇ」
デブゴン先生と私がアハハと談笑していたら、暗い廊下からヌッと急に人影が飛び出してきた。
思わず「ギャッ!!」と叫んでデブゴン先生の大きくて広い背中に抱きつく。
「わぁっ!……って、なんだぁ。変人先生じゃないですかぁ」
デブゴン先生のその言葉を聞いて慌てて顔を出すと、暗闇に紛れて青白い顔の辺見くんが白衣姿でぼんやり立っていた。
本気で幽霊と見間違えてしまった。
それほどヤツには生気がない。前よりもさらにやつれたような……。
「小牛田先生が不審者を連れてくるんじゃないかと思って待ってたの。不審者ってまさか宮間さんだったなんて驚いたよ」
「お願いだからビックリさせないでよ〜。そんな姿だからリアルに亡霊っぽいんだもん」
「どうせ僕はガリガリ君だよ」
ヤバッ!デブゴン先生改め小牛田先生との会話を聞かれちゃってた!
内心ちょっと焦る。