窓ぎわ橙の見える席で


スラッと背が高い辺見くんは、白衣が思いのほか似合っていた。
さすがに白衣は支給されるものなのかわりと綺麗で、でもその下に着ている服は相変わらずボロい。


小牛田先生が気を使ってなのか「先に職員室に戻ってます〜」とその場から立ち去ったため、私と辺見くんは必然的に2人きりになった。


「でも一体何があったの、宮間さん?うちの学校に来るなんて……。何時だと思ってるのさ」


いきなり現れた私に戸惑っているのだろうな。
私だって自分で自分の行動の意味がよく分からない。
放っておけばいいものを、彼がくたばっているんじゃないかと心配になってしまったのは隠しようもないことなのだ。


「まかない、持ってきただけ」

「………………僕に?」

「辺見くん以外に誰がいるのよ。デブゴンとは初対面だし、私」


笑わせようと思ってデブゴン先生の話題を出したというのに、辺見くんは豆鉄砲でも食らったみたいな顔で目を丸くして私を見つめている。


「僕のために?こんな遅い時間に来てくれたの?」


いや、改まって言われるとなんだか恥ずかしいんですけど!
こんな時に顔が赤くなるほど純情でもない私なので、この場を取り繕うために適当に言い訳をしておいた。


「食堂からまぁまぁ近いし、死んでたら困るなーって思ったから帰るついでに寄っただけ。仕事終わりに寄ったからこんな時間になったの。それだけ。本当に本当にそれだけ!」


誰に向かって言い訳しているのか、 とても挙動不審でとても怪しい。
おまけに可愛げなんてものは皆無だ。


だけど、そんな私に辺見くんは優しく微笑んだ。
「気にかけてくれてありがとう」と。


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