窓ぎわ橙の見える席で


どうしてそこに辺見くんが出てくるのか!
オーナーたちといいてらみといい、私と辺見くんがどうにかなるとでも思っているのだろうか。


「同窓会に行くか行かないかなんて辺見くんが決めることなんだから、私は関係ないでしょ」

『誘うのよ、あんたから』

「えー……なんで私が……」

『見てみたいのよ、三十路になった変人くんを』


かなり自分勝手な意見を押し通すてらみに、もはや言い返す元気もなく。
私は投げやりに「あ〜い」と返しておいた。


三十路になった辺見くんは、高校の時となんら変わりはない。
本人は自分のことを「酷いオッサンになった」と言っていたけれど、そんなに言うほど酷くもなければオッサン化しているわけでもない……と思う。


確かにあの見た目を気にしない伸ばし放題の髪の毛とボロボロになるまで着込んだ服はどうかと思いますが。


素材は悪くないのに、生かし切れていないというのが正しい表現のような気もした。


目が細いから、前髪はこう……ちょっと流す感じにして、短髪よりは少し長めの方が似合うと思うのよね。
服だって暗い色のものばっかり着ているから、清潔感あるリネンぽいシャツと細身のデニムなんかを合わせたらあっという間にオシャレ男子……にはならないけど、まぁまぁいい感じにはなるはずなのだ。
1ヶ月、高カロリーのお弁当を配給してあげているからか前よりは肉もついてきて、まだ痩せ気味ではあるけど病的な細さは無くなったし。


辺見くん改造計画を密かに企てていることなど、本人はおろかてらみにも絶対に言えない。
勝手な妄想のようなものだった。










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