窓ぎわ橙の見える席で


私の膝の上には朝に辺見くんに渡した大きなお弁当箱。
もちろん中身は空になっている。
学校で洗っているのか、いつも食べ終わったお弁当箱は綺麗にして返してくれるのだ。
意外にそういうところは律儀な人らしい。


このお弁当箱を使うようになって1ヶ月。
これが彼の血となり肉となり、栄養となっているのならばそれは嬉しいことだ。
ガリガリ君から脱して、人並みの痩せ型になったのだからいいことでもある。


さて、同窓会の件でも切り出してみるか。


「あのさ、辺見くん」

「なに?」


運転中の彼には見ることは出来ないだろうけど、バッグの中から同窓会の案内状を取り出して尋ねた。


「同窓会のお知らせ、受け取った?」


私の問いかけに対して、辺見くんは前を向いたまま「ん?」と聞き返してきた。


「同窓会?なんの?」

「高校の。あの頃の生徒会が中心になってみんなに声かけてるみたいなの。辺見くんのところに届いてない?」

「…………あー、郵便受け、2ヶ月くらい見てないや」

「に、2ヶ月!?」


耳を疑ってしまって、思わず想像する。
パンパンに破裂しそうなくらい詰まった郵便受けを。
広告やら電気料金の伝票やらなんやらで溢れ返っているのが容易に分かる。


「帰ったら見てみるよ。猫にエサあげてからになるけど」

「忘れないように一番に見てほしいな……」

「努力するね」


普通にうなずいているけれど、ちゃんと確認するかどうか怪しいもんだ。
興味が無いものにはとことん無頓着なのは、もう十分知っている。


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